永瀬伸子・お茶の水女子大教授(労働経済学、社会保障論)は「厚生年金の保険料は労使折半で企業負担も課題になる。パッケージは、雇われる側の手取りが下がらないだけでなく、急に社会保険料負担に踏み切れない企業に対して、調整する時間を与えられる。パート人材を育てて業務分担を見直し、低賃金に抑えられない状況にしていくため、一時的な支援としては評価できる」と述べる。
その上で「人口減の日本の将来を見据えれば、就業調整によって能力を生かせないことほど意味のないものはないが、80年代から指摘されてもなくならない」と改めて年収の壁を問題視。「非正規のパート女性が雇用の調整弁となって低賃金で家計を補助する立場で働いてきた一方、男性は正規雇用と年功で処遇されてきた。妻が子育てをしないと家庭が回らない働き方を放置している場合ではない」と指摘。「男女の家庭での役割や働き方を変えて生産性を上げ、年功によらず能力で評価される社会にしていくべきだ。今はそのための準備期間と企業も労働者も理解する必要があるのでは」と語る。