研究室紹介

当研究室は2021年10月に設立された新しい研究室です。2024年度現在、大学院博士後期課程(博士課程)の院生が5名、大学院博士前期課程(修士課程)の院生が4名、学部4年生が4名所属しています。

研究室が目指すもの

人の心の仕組みを探る心理学の研究は、人間に関わる非常に広い範囲の社会的課題の解決に貢献するポテンシャルを持っていますが、実際には、それが十分発揮されておらず、実践や政策に資する実証的エビデンスの蓄積は進んでいません。こうした状況を変えるため、「再現性」と「応用可能性」を重視した研究を展開し、保育・教育、心理臨床、育児支援などの実践や政策形成上の議論に資する確かなエビデンスの創出を目指します。もう少しシンプルな言い方をすれば、心理学の研究の力で、この世界を誰にとっても生きやすく、楽しいところにしていこうということです。

育成したい人材

この研究室では、研究と実践・応用・政策をつなげることのできる2種類の人材の育成を目指しています。

実践に貢献できる研究者

心理学の研究法と統計法について高い水準の知識・スキルを身に着け、実践や政策形成を助ける確かなエビデンスを創出できる人材。

研究に精通した実践者

最先端の科学的エビデンスを取り入れた実践が展開できるとともに、日々の実践を深めるための研究を自ら計画し実行できる人材(公認心理師、教師、保育士など、人の心理や発達に関わるあらゆる領域の実践者を想定しています)。

研究の進め方

この研究室での研究の進め方は大きく2つに分かれます。1つはメンバー各自で自由にテーマを設定して研究を進めるという方法です。この場合、研究のテーマや方法を自らの関心に沿って自由に考えることができ、一から研究を組み立てるという面でのやりがいがあります。担当教員の伊藤は、原理(統計、測定、研究法など)、基礎(認知、感情、神経・生理、発達、社会など)、応用(教育、臨床、産業など)まで、心理学の幅広い領域の研究に関わってきたため、教育心理学に限らず、人の心に関することであれば、基本的にどの領域の研究テーマにも対応します。これまでの所属メンバーは、以下のような多様なテーマに取り組んできました。

卒業論文

・個人-組織の適合(Person-Organization fit)がウェルビーイングに与える影響

・感覚処理感受性と主観的幸福感および発達期の養育環境・友人関係

・自虐的ユーモアの成否を規定する要因

・コロナ禍における適応とアタッチメントスタイル

・大学生における学習・就職活動への動機づけと過去の進路選択

・推し活(ファン行動)の形成要因と精神的健康への影響

修士論文

・テレワーク環境におけるメンタルヘルスの規定因

・児童期における親へのアタッチメントと友人との葛藤対処方略の関連

・ASD児の親の育児ストレスに関する日中比較

・親子関係と自傷行為の関連

博士論文

・成人形成期のキャリア発達に関わる要因の日中比較

・情緒・行動問題のある子どもをもつ親への支援プログラムの開発

・保育・養育環境が子どもの発達に与える影響

・セックスワーカーの発達的支援ニーズの把握

・一般小中学生におけるASD特性と心理社会的適応の関連

もう1つの研究の進め方は、担当教員が実施している研究プロジェクトに参加するという方法です。個人単位では実施の難しい大規模な研究に参加することで、実践や政策に直結する研究成果を創出できるという面でのやりがいを感じられると思います。担当教員の伊藤は複数の研究プロジェクトを並行して進めていますが、2008年から継続的に関わっているプロジェクトとして、子どもの心の発達と精神病理に関する大規模縦断研究があります。この研究では、ある都市の全ての子どもを対象として、乳幼児期から思春期に至るまで追跡的に調査を行うことで、不登校、いじめ、非行、自傷行為などの深刻な情緒・行動問題の発生・回復のメカニズムを探り、予防・介入の方策について提言することを目的としています。毎年約1万人の子どもやその保護者・教師・保育士を対象に調査を実施しており、心理学領域では国内で最大規模の縦断研究です。この研究に参加する場合、既存のデータを分析して論文化することもできますし、関心のある変数を新たに調査に追加して検証を行うこともできます。乳幼児期から思春期までを追跡しているため、発達に関する幅広いリサーチクエスチョンの検証が可能です。

このような2つの研究の進め方がありますが、各自の関心に応じてどちらを選択してもかまいませんし、大学院生であれば両者を並行して進めるのもよいと思います。

研究室に関心をお持ちの方へ

卒業論文、大学院(修士または博士課程)、研究生、特別研究員など、研究室への参加を検討されている方は、以下の担当教員(伊藤)のメールアドレスまでご連絡ください。

ito.hiroyuki@ocha.ac.jp

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